IFRSのための会計英語|海外の決算書には経常利益も特別損益もありません




海外の決算書には経常利益はありませんというと、多くの方は驚きます。日本では、経常利益は、「ケイツネ」などと呼ばれ、企業の業績や経営状態を測る最も重要な指標のひとつとされているからです。

でも本当です。経常利益は、日本特有の利益の概念であり、海外の決算書には存在しません。

IFRSでは、企業の収益や費用に特別なものなど存在しないという考えに立っており、ISA1号では、その87項で、「企業は、収益又は費用のいかなる項目も、純損益及びその他の包括利益を表示する計算書又は注記において、異常項目として表示してはならない」と規定しています。

したがって、日本の基準のように、営業外の損益を、経常的に発生する営業外損益と、臨時的に発生した特別損益に分解することは、求められていません。というよりも、分解することは禁止されています。

そのため、海外の決算書には、営業利益から経常的に発生する営業外損益を加減算して計算される経常利益も存在しないんですね。

もくじ

経常利益は英語でどう表現するか

経常利益は海外の決算書には存在しないので、英語もありません。

といっても、日本の決算書を英訳するという場面はあるので、一生懸命考えるわけです。そこで登場したのが、Ordinary Income(Profit) という表現です。Ordinary は、「一般の」とか、「通常の」とかいう意味ですので、Ordinary Income(Profit) は通常の利益というような感覚しょうか。

一生懸命英訳したわけですが、これはIFRSをはじめとする海外の決算書を読みなれた人には、とても奇妙な言い回しです。

通常じゃない利益ってなんだ?って考えさせられるわけです。

そんな、海外事情を知る人は、経常利益を英訳するとき Recurring Profit と訳したりします。Recur は、Re(再び、繰り返し)+cur(起こる、生じる)ですから、繰り返されるというような意味です。

繰り返す?やっぱり変な感じです。

ちょっと事例を見てみましょうか。

ニトリの2018年2月期の決算短信とその英訳です。(ニトリHPより)

【日本語版】

【英語版】

経常利益が表示されていますよね。決算短信は、東京証券取引所のルールに則って作られるので、ニトリが決めた表示項目ではありませんが…

経常利益は、Ordinary Income と英訳しています。

日本で経常利益が重視される理由

最近では、企業価値(株価)の評価のメカニズムを理解した投資家が多くなってきて、やみくもに「ケイツネ」を重視する人も少なくなってきましたが、まだまだ「ケイツネ」は企業の業績を測る重要な指標のひとつに違いありません。

その証拠が上記の決算短信です。

上場企業が決算速報として発表する決算短信には、売上高、営業利益、当期純利益とならんで、経常利益が表示されています。

日本で経常利益が重視されているのは、間接金融、すなわち銀行借入が資金調達の手段であった、従来の日本型経営のなごりです。

営業利益と経常利益の差、すなわち営業外費用の主な要素は、何を隠そう支払利息です。事業から得られた利益(営業利益)から、資金調達のためのコストを差し引いた利益が、毎期継続的に獲得できる利益(経常利益)と考えたんですね。

支払利息は毎期同じくらい発生するので、それほど外れていないような気もします。が、支払利息は、資金調達の選択の結果であって、企業が本業から獲得できる能力をあらわすものではありません。企業価値を評価するにあたっては、通常は支払利息の影響は排除しますから、やはり少し独特という感じはしますね。

ちょっとマジめになりすぎたかも (^^;

特別利益と特別損失は英語でどう表現するか

経常利益をOrdinary Income(Profit)=通常の利益と表現したので、特別利益や特別損失は、それに含まれない損益、つまりは通常ではない損益=Extraordinary Gain(Loss)という表現になってしまいました(笑)

笑い事でもないのですが、日本の特別損益は、固定資産売却損、固定資産除却損、投資有価証券評価損、減損損失のような項目が多いので、Extraordinary という表現は当たっていない感じもしますが、特別損益はほぼ例外なく、Extraordinary Gain(Loss)と英訳されます。

特別損益項目の英語

最後に特別損益に計上される各項目について、どのような英語表現がされるかを見てみましょう。

日本語 英 語
固定資産除却損益

Loss/Profit on Retirement/Disposal of Fixed Asset /Property

固定資産売却損益

Loss/Profit on Sales of Fixed Asset /Property

投資有価証券評価損益

Loss/Profit on Valuation of Investment (in) Securities

減損損失 Impairment Loss
災害損失 Loss from Calamity
構造改革費用 Restructuring Costs (Charges) 
早期割増退職金 Early Retirement Bonus

これらは、日本の決算書では、典型的な特別損益項目ですが、IFRSベースをはじめとする海外の決算書では、営業外損益(Non-Operating Revenue/Expenses) として表示されるという点に留意が必要です。

Disposal(処分)と Impairment(減損)は頻出ですので、なるべく早く覚えてしまいたい単語です。

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