海外へ赴任すると急に現地企業の管理職や役員に昇格したりします。昇格はうれしいんですが、それは同時に、今まで自分のことや自分の所属している部署にだけ注意を払っていればよかった立場から、会社全体の経営や管理も任される立場になるということを意味しているわけでして。
そうなると、会社がどんな状態なのか、どんな業績なのかを、把握できるようにならないと務まらないので、今まではそれほど関心がなかった決算書とか財務諸表とか、読み解けるようになっていかないと。
これを乗り越えられるかどうかが、将来の出世の分かれ道です。昔と違って、海外子会社へ行っていましたというだけじゃ、それほどアドバンテージを取れない感じになってますから。
ということで、海外で働きながら、悪戦苦闘しながら身につけた会計ノウハウを、今回も分かりやすく解説していきますね。
今回は、税金です。
まずは、かんたんなところから。税金とその英語表現を見ておきましょう。
「会社の3種類の税金」と「個人の1種類の税金」
税金の会計処理で押さえておくべきは、会社が払う税金3種類と、個人が払う税金1種類だけです。会社が3つ、従業員が1つ。
会社が払う3種類の税金と会計処理の違い
会社が払う税金には、① 会社の利益に応じて課税される税金、② 利益と関係なく支払わなければならない税金、③ 消費者から預かった税金、の3種類があります。
① 会社の利益に応じて課税される税金
日本の場合は、法人所得税、法人住民税(法人税割)、事業税(所得割)がこれにあたります。シンガポールなら法人税だけです。
この税金は、損益計算書の下の方、最終利益の前に計上されます。
損益計算書の下の方だけ抜粋して、日本語と英語を比較するとこんな感じになります。
日本語 | 英語 |
税金等調整前当期純利益 | Income before income taxes |
法人税、住民税及び事業税 | Income taxes – current |
法人税等調整額 | Income taxes – deferred |
法人税等合計 | Income taxes |
当期純利益 | Net income |
ちなみに、法人税はCorporate income tax、住民税はInhabitant tax、事業税はEnterprise tax、です。
日本の場合、利益に対応する税金を「法人税、住民税及び事業税」と記載しますが、これを英訳する場合でも、Income tax – current (当期の(法人)所得税)とだけ記載します。全部羅列したら長いですからね(笑)
② 利益と関係なく支払わなければならない税金
①とは異なり、会社が利益を上げようと上げまいと払わないといけない税金があります。
日本であれば、事業税(付加価値割、資本割)とか、事業所税とか、固定資産税とかがそれにあたります。印紙税なども、そうですね。
日本語ではこれを租税公課といって、損益計算書では、販売費及び一般管理費に計上します。
英語では、Tax and Due とか、Sundry Tax などと、表現されます。
一瞬、意味の捉えにくい英語ですが、営業費用に計上されているTaxの付く科目は、日本でも海外でも、所得(利益)に関連しない税金なので、租税公課しかないと覚えていただければ十分です。
③ 消費者から預かった税金
いわゆる間接税というやつです。日本では消費税(Consumption Tax)、シンガポールではGST(Goods &Service Tax)、通常の諸外国ではVAT(Value Added Tax) などが、これに当たります。
会社がモノやサービスを販売したときに、買主が支払う(最終的には消費者が負担する)税金で、会社は一旦預かった税金を支払うだけです。なので、消費税は損益には影響させず、貸借対照表に資産・負債として計上されることになります。
仮受消費税等(負債):Suspense receipt of consumption taxes
未収消費税等(仮払消費税等の方が仮受消費税よりも多い場合)
:Consumption Taxes Receivable
未払消費税等(仮受消費税等の方が仮払消費税よりも多い場合)
:Consumption Taxes Payable, Accrued Consumption Taxes
従業員が払う1種類の税金と会計処理
まず、会社の会計処理の説明なので、従業員が払うといっても、会計処理の主体は会社であることに一旦注意してください。
従業員の給料は、総額から税金や社会保険料を差し引かれて支給されますよね。会社は給料から所得税を天引きして、一旦税金を預かって、あとで会社が従業員に代わって納付(支払)します。
なので、会社からすれば、従業員から預かったお金を納付しているだけ。利益には影響させず、貸借対照表に一旦預か金として計上して、納付したときにこれを取り崩すという処理を行います。
預り源泉税:Withholding Tax, Tax Withheld
(Withhold は源泉するという意味です)
会社を運営するなら税金を意識すべし
偉そうなことを言って申し訳ないのですが、会社を運営するのに税金というコストがかかることを意識しないと、販売価格の設定なども誤ります。
例えば、100万円で商品を仕入れて、50万円の利益を出したい場合、単純に150万円で売ったとすると、利益は50万円出ないんですね。
利益50万円にたいして、税金が例えば30%掛かるとしたら、15万円は税金で持っていかれるわけですから、残りの利益は35万円だけという結果になります。
つまり、利益のいくらかが税金になるということを意識しながら販売戦略を立てないといつも最終目標を達成できないということにもなりかねません。
そのため、会社全体を見る場合には、利益に対して、どれくらいの税率で税金がかかるかを知っておくことが重要です。この税率のことを、実効税率(Effective tax rate)といって、会社運営にあたってはいつも意識しておかなければいけない重要な数値になります。
この実効税率は国によって異なるので、一度ご自身の会社の決算書を見て、会社が利益に対してどれくらいの税金を負担しているのか計算してみてください。
税金に関する会計英語 まとめ
国ごとにも異なる税金に関する制度をすべて網羅的に説明するのは不可能なので、専門用語の英語だけまとめておきましょう。
✅ 財務諸表項目の英語
日本語 | 英語 |
法人税等 (法人税、住民税及び事業税) | Income Tax – Current |
未払法人税等 | Income taxes payable |
未収還付法人税等 | Income taxes receivable |
未収消費税等 | Consumption Taxes Receivable |
未払消費税等 | Consumption Taxes Payable |
繰延税金資産 | Deferred tax assets |
繰延税金負債 | Deferred tax liabilities |
法人税等調整額 | Income Tax – Deferred |
租税公課 | Tax and Due,Sundry tax |
源泉所得税 | Withholding Tax, Tax Withheld |
✅ 各種税金に関する英語
日本語 | 英語 |
法人税 | Corporate income tax |
住民税 | Inhabitant tax |
事業税 | Enterprise tax |
事業所税 | Business office tax |
固定資産税 | Property tax |
固定資産取得税 | Real estate acquisition tax |
印紙税 | Stamp duty |
物品サービス税 | GST(Goods &Service Tax) |
付加価値税 | VAT(Value Added Tax) |
個人所得税 | Personal income tax |
税務申告 | Tax return |
税金還付 | Tax refund |
控除 | Deduction |
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