取締役や監査役に対する役員報酬、役員賞与、それに役員退職慰労金の会計処理と英語表現を解説していきましょう。
役員報酬・役員賞与とは
役員報酬というのは、取締役や監査役などに対して、あらかじめ決定した支給基準に基づいて、一定期間に定期的に支払われる報酬のことですね。
役員は法人税の規定で定められた、定期同額給与、事前確定届出給与、利益連動給与、だけが損金に算入でき、その額を「役員報酬」と言います。
法人税の規定で定められた方式以外で支給した臨時の報酬は、「役員賞与」とされ、損金に算入できません。
役員は会社の利益処分について方針を決められるため、自分の報酬額を多くして会社の税金を少なくするようなことを行いかねない、という考えから、役員報酬は税務上厳格に規定されています。
具体例でみてみましょう。
会社に利益(100)が出る→法人税(30)を払う(税率30%)→残りから配当(70)をする→配当を受け取ったら所得税(14)を払う(税率20%)
~ トータルの税金は法人税30+所得税14=44 ~
もし、役員賞与が損金なら、役員賞与の方がお得という人が出てくるので、それを防止しようという発想です。
会社に利益(100)が出る→役員賞与(100)を払う→利益はゼロになる→法人税はなくなる(0)(税率30%)→役員は賞与(100)を受け取ったら所得税(20)を払う(税率20%)
~ トータルの税金は法人税0+所得税20=20 ~
これはマズい。ということで、役員賞与は損金に入れさせません(税金の計算上マイナスさせません)とうことになったんですね。
会社に利益(100)が出る→役員賞与(100)を払う→税金計算上の利益は100のまま→法人税(30)を払う(税率30%)→役員は賞与(100)を受け取ったら所得税(20)を払う(税率20%)
~ トータルの税金は法人税30+所得税20=50 ~
一瞬納得ですかね。でも、役員は会社から業務を委託されている人なんですよね。所有者(株主)と同一人物とは限らないので、上記のロジックは必ずしも当てはまりませんね。
結局、役員賞与が損金算入できない理由は、①その方が税金が多く取れる②役員さんは少数派だから声を上げても通らない③給料は多いから余裕があるし文句を言うのは後ろめたいし、かっこ悪い④多数派の従業員のやっかみ感ともマッチする。なんですかね(笑)
ちなみに、税務と関係なく、一般的に役員報酬といったら、税務上の役員報酬だけでなく、賞与や退職金など役員に対して払った金員すべてを含んだものを言います。
役員は自分で自分の給料(役員報酬)を決定できるので、いわゆるお手盛りを禁止するため会社法でも制限されています。定款で定めるか、株主総会決議が必要とされ、実務では、株主総会で総額(上限)を決めて、詳細は取締役会で決定(もしくは代表取締役に一任)するという運用がされています。
役員報酬は英語で何て言う?
役員報酬は、英語で、Director’s compensation がよく使われますが、Director’s remuneration もそれなりの使用頻度があると思いますので、remunerationも押さえておいた方がいいですね。
なんとなく、compensation(報酬)はアメリカ英語かな、remuneration(報酬)はイギリス英語かな、という感じはします。
元イギリス領のシンガポールでは、remuneration の使用頻度が高い気がします。
役員賞与は、英語で、Director’s bonuses ですね。ボーナスなのでわかりやすいですね。
役員退職慰労引当金とは
取締役や監査役に対して将来支払う予定の退職慰労金に備えて計上する引当金ですね。
日本では、役員が退職したときに退職慰労金を支払う慣行があり、役員退職慰労金について社内規程があって、算定根拠が明確な場合には、役員退職慰労引当金を計上することとされています。
役員退職慰労引当金は英語で何て言う?
役員退職慰労引当金は、英語で、
provision for director’s retirement benefits
と言います。
なお、役員への賞与を株主総会決議で決める場合には、役員賞与引当金を計上しますが、役員賞与引当金は、英語で、provision for director’s bonuses です。
両方とも、provision for ~ ですね。負債性の引当金は、provision for ~ を押さえておくと、大抵カバーできます。