【シンガポールの法人税】移転価格税制ってなに?

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経済活動のグローバル化により、国際取引がどんどん複雑になって、所得や利益の国外移転がしやすくなって、各国とも適切な税収源を捕捉に課題を持っていますね。結局、税率の低いところにお金が流れているんじゃないかと。実際そうでしょうね。

このような国際税務上の課題に対処するため、経済協力開発機構(OECD)はG20 との協働のもと、税源浸食と利益移転(BEPS)プロジェクトの策定に着手し、2015年に最終レポートとして行動計画15を公表しています。中でも注目されているのが、15の行動計画のうち行動計画13、移転価格に関する文書化の方針です。行動計画13は、三層構造といわれる①マスターファイル、②ローカルファイル、そして③国別報告書様式から成る移転価格に関する文書化することを企業に求めることを提言しています。

このOECDによるBEPSの行動計画の最終レポートの公表を受けて、日本でも2016年度税制改正により一定規模以上の企業に対して、この三層構造による文書の作成・保存を義務化しています。

シンガポールは、低税率国ですので、日本から見ればむしろ利益が移転される側、すなわち税収が増加する側というように考えられがちですが、シンガポールよりも税率の低い国は他にもありますし、インターネットの普及により金融資産の移転も容易に行えますから、税収源の流出という課題は、他人ごとではありません。

また、シンガポールは、外国企業の誘致で自国経済が成り立っている国ですので、経済不祥事により外国企業が撤退するようなことが万が一にもあれば、それは国の存亡にかかわる事態となりかねません。シンガポール政府は、そういった危機感を常に持ちながら企業活動を監督していますので、不透明な取引を排除するという意味では、このBEPSの取り組みに足並みをそろえるインセンティブを持っているんですね。

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シンガポールの移転価格制度の特徴

シンガポール、実はG20 でもOECD加盟国でもありませんが、上記のような事情もありOECDのBEPS行動計画に沿って移転価格制度を設定しています。ですので、移転価格に関する規制は大枠では日本の制度と同じようなものである、という理解からスタートしていいでしょう。

多くの日系企業が注意しなければならないのは以下の点でしょう。

移転価格制度の対象となる取引

移転価格税制の趣旨からすれば、一方当事者が取引価格を不当にコントロールできる場合が対象であり、シンガポールではこれを関連者(Related party)との取引と定義しています。

日本では、移転価格規制の対象取引の相手方(国外関連者)についてその判定の基準を細かく規定しているのに対して、シンガポールでは関連者(Related party)の判定は、直接的または間接的に支配(Control)されている関係にあるかどうかという広義の基準を規定しているのみです。日本でもシンガポールでも、移転価格制度の趣旨に照らせば、関連者の実質的な意味合いは変わらないはずですが、シンガポールの規定の仕方の方が当局の自由裁量の余地を残しているともいえますので、グレーゾーンについては保守的にジャッジしせざるをえない局面があるかもしれません。

必要な移転価格に関する文書

シンガポールでも、基本的には、BEPS行動計画に沿って以下の3セットの作成・保存が求められます。

① マスターファイル(多国籍企業グループの組織・財務・事業の概要等、多国籍企業グループの活動の全体像に関する情報を掲載したも・・・グループレベルの資料としての位置づけ。)

② ローカルファイル(関連者間取引における独立企業間価格を算定するための詳細な情報を掲載したもの・・・企業レベルの資料としての位置づけ。)

③ CbCR(国別報告書。グループ内の企業について、所在国毎の総収入・所得・税額・資本金等の財務情報、従業員数、有形資産金額、事業内容を記載した一覧表・・・捕捉資料としての位置づけ。CbCRはグループの最上位会社が作成を求められるものであるため、日系のシンガポール子会社は作成を要しない。)

文書化のタイミング

取引前に作成し価格の妥当性を検証すべきとされるが、実務上は税務申告期限までに用意すれば問題ない。ただし、IRASから提示要請があった場合には30日以内に提出することが義務付けられています。

罰則規定

文書化を怠った場合には、①IRAS による加算調整、②相互協議の不受理、③事前確認制度の利用不可等の不利益を被ることになります。シンガポールですので、当然の施策です。

移転価格に関する文書の作成免除の要件

以下の場合は移転価格に関する文書の作成が免除されます。

① シンガポール国内の関連者との取引(金銭消費貸借取引を除く)で、取引当事者双方ともに同じ税率が適用されている場合
② シンガポール国内の関連者間の金銭消費貸借取引で、貸手が貸金業でない場合
③ 関連者間におけるroutine serviceに関し、5%マークアップの方法を採用している場合
(5%マークアップについては、こちらをご参照ください。➡ 「5%マークアップについて」
④ 関連者間の金銭消費貸借取引における金利に、指針スプレッドが適用される場合
⑤ 関連者間取引がAPAに基づく合意の対象であり、納税者が当該合意に基づき関連文書を適切に保管し、かつ、合意時の主要な前提
が有効である場合
⑥ 上記以外の関連者間取引において、関連会計年度における取引金額が下記に示される金額を超えない場合
1. 関連者からの仕入 : 15百万シンガポールドル(約12億円)
2. 関連者への売上 : 15百万シンガポールドル
3. 関連者からの借入 : 15百万シンガポールドル
4. 関連者への貸付 : 15百万シンガポールドル
5. その他の関連者間取引
(例:サービス関連の収入・サービス関連の費用・ロイヤリティー収入・ロイヤリティー費用・賃貸収入・賃貸費用)
各項目毎に1百万シンガポールドル(約8千万円)

関連者間取引の開示の強化

移転価格文書とは別に、YE2018年から、原則として全てのシンガポール居住法人は、Form C(確定申告書)の提出時に、関連者間取引報告のフォームをあわせて提出することが求められます。

損益計算書上の関連者間取引合計と貸借対照表上の関連者に対するローンと非営業債権債務の年度末残高合計の合計が15百万シンガポールドル以下の場合には、提出は不要です。

免除要件があるので、小さい会社はそうそう必要にはならないと思いますが、大きな会社は専門家に相談しながら対応するしかないですね。この問題、国際的には対応しないとハブられそうな空気があるので。といっても、お金持ちはいろいろな方法で節税してると思いますけどね。で、それをみんな知っているという実態がまた悲しいですね。

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