シンガポールで会計監査が必要かどうか?




2015年7月1日施行(同日以降開始事業年度より適用)の改正会社法で法定監査の対象範囲が変更になりました。当初はいろいろと混乱がありましたが、だいぶ落ち着いてきたと思います。

会計監査が免除されるかどうかは、日系進出企業の重要な関心ごとのひとつだと思います。免除される場合が広くなってきたとはいえ、根本にあるのはシンガポール政府はすべての会社の内容をきちんと把握しておきたい、報告される財務内容が正しいものであることを担保するため会計監査をきちんと受けよ、ということですので、日本より会計監査の要求水準は格段に高いことを認識しておく必要があります。

もくじ

会計監査の免除要件

Small Company(小規模会社)であること

Small Company(小規模会社)は会計監査が免除されます。

✅ Small Company(小規模会社)の定義

直近2会計期間のいずれかにおいて、下記3つのうち2つ以上を連結ベースで満たす会社をいいます。

①年間売上高が10百万SGD以下であること

②総資産額が10百万SGD以下であること

③従業員数が50名以下であること

なお、会社法改正前は監査免除の要件とされていた株主の性質は問われません。個人株主でも法人株主でも、上記の要件を満たせば監査は免除されます。

改正会社法は、シンプルに小規模会社を定義し、小規模会社は監査免除という規定になっています。← 実はここが肝です。つまり、実質的な判断はないわけです。

✅ 連結ベースでの判断

上記の基準は親会社・もちろん子会社があれば子会社も含めた連結ベースで判断しなければなりません。したがって、親会社が日本の上場企業などのように一定規模以上ある場合には、普通は検討するまでもなく監査が必要になります(親会社も含めた連結ベースの事業規模はかなり大きいはずなので)。

問題となるのは、シンガポールの会社が持ち株会社(親会社)で、日本を含む海外に子会社を持っているようなケースです。このような場合であっても、グループで上記の基準を満たせば、シンガポールの会社(親会社)は連結財務諸表を作成し、連結財務諸表の監査を受けなければなりません。例えば日本の子会社が、日本で会社法監査の基準も満たしておらず、会計監査も受けていない場合でも、シンガポールの(連結)会計監査をうけるために、なにがしかの対応が必要になってくる場合があります。

休眠会社であること

休眠会社も会計監査が免除されています。

休眠会社に関する会社法の規定の適用をうける前に、まず休眠の定義を知っておく必要があります。シンガポールの会社法における、休眠の定義はとても狭いので注意が必要です。単に売上がないとか、営業をしていないとか、というだけでは、休眠会社とは認定されません。

✅ シンガポールでの休眠会社の定義
シンガポールの会社法は、「休眠」状態を以下の取引以外の会計取引が一切発生していない状態と定義しています。
① 定款に従った株式の引受け
② カンパニーセクレタリーの選任
③ 会計監査人の選任
④ 登記住所の維持
⑤ 登記書類及び会計帳簿の維持
⑥ 会社法に基づく登記手数料や罰金等の支払い
したがって、ほとんど動きがないような状態であっても、上記以外の取引が発生している場合には休眠会社に当たらず、通常の会社と同じように決算書を作成し、会計監査の必要性を検討する必要がでてきます。

✅ 休眠会社は何が免除されるのか?
① 決算書の作成が免除されます。
② 決算書がないので当然といえば当然ですが、会計監査も免除されます。
③ さらに、以下の要件を満たし、免除申請をした場合には、法人税の申告も免除されます。
・ 当該賦課年度において一切事業を行っておらず、かつ、売上がないこと。
・ 投資資産(株式、不動産、定期預金など)を保有していないこと。
・ GST登録事業者はGSTの登録解除を行っていること。
・ 2年以内に再度事業を再開する意図がないこと

休眠状態であると思っていても、例えばその会社を管理するだけの従業員がいたりすると、休眠会社にはなりませんので、注意が必要ですね。

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