2015年7月1日に制度化された出国税。正式には「国外転出時課税制度」といいます。多額の資産を保有している人が出国する場合に、売ってもいないのに税金がかかる制度です。
お金持ちの人のお話しなので、自分のようなサラリーマンには関係ない話しですが…。どうして出国するのに税金がかかるのか?
ちなみに今話題なのは2019年1月から導入されることが決定している出国税はまた別ものです。正式名称は国際観光旅客税といいます。
こちらは、観光旅客税といいながら、日本国民も対象にしたもの。すべての出国者に対して1,000円徴収しようという打ち出の小槌です。こっちも物申したいことがありますが、今回はビジネスのカテなので、とりあえず横に置いておいて…。
出国税とは
出国時に有価証券等、未決済信用取引等及び未決済デリバティブ取引の合計金額(評価額)が1億円以上あって、国外転出をする日より前の10年以内に国内に住所又は居所を有していた期間が5年超である方が、海外転出する場合に、その保有資産の含み益に対して所得税を課すという制度のことです。
本人が海外に転出する場合のほか、日本人の海外居住者に譲渡等を行う場合も含まれます。お金持ちの海外流出を防ぐために日本がとった苦肉の策かのように言われてましたが、オーストラリア、オーストリア、カナダ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、イタリア、ニュージーランド、ノルウェー、オランダ、スペイン、スウェーデン、英国、米国等でも導入されている、国際的にみれば普通の制度です。
なんでできたの?
お金持ちはいいですねぇ😄
例えば含み益のある株を持っていて、日本で売ると、売却したときの利益に税金がかかる訳です。
が、シンガポールや香港では、キャピタルゲイン(投資してもっていただけで値段があがったことによる利益)課税がないので、国外に脱出してしばらく住んでから売却したりするなんてことが行われていたわけです。
いいですねぇ。まあ、日本で売ればかかったはずの税金がシンガポールへ行けばかからないわけですから、みんなシンガポールへ資産をもって移住したわけですね。お金持ちの方々は。
そこで、遅ればせに、導入したのが、この出国税。日本で売れば払わなければならなかったはずの税金を払ってから出国してくださいね。
まあ、国として当たり前の防衛策ですね。だから、先にも挙げたとおり、国際化したどの国ではすでに合ったわけです。
シンガポールに住んでいると、この出国税の導入前に、移住してきたお金持ちがたくさんいます。
出国税の特殊性と納税猶予
出国税はまだ売却等によって収益が実現していない単なる資産の評価益に対して課税します。
そのため、税金を納める側からすると、納めたくても現金がないわけですから、納税資金に苦慮することが十分に考えられますよね。
そこで特別な措置として、一定の手続きを踏むことで、納税の猶予(通常5年間、申請により最大で10年間)が認められています。
手続きは以下の通りです。
① 国外転出の時までに所轄税務署へ納税管理人の届出する。
② 国外転出の日の属する年分の確定申告書に納税猶予の特例の適用を受けようとする旨を記載し、「国外転出時に課税があったとした場合に対象資産の明細書」を添付する
③ その確定申告書の提出期限までに、納税を猶予される所得税額及び利子税額に相当する担保を提供する
④ 以降納税猶予を継続したい場合には、毎年12月31日に時点の納税猶予の対象資産に関して引き続き納税猶予の特例の適用を受けたい旨を記した継続適用届出書を、毎年納税管理人が翌年の3月15日までに所轄税務署へ提出することで、年度ごとに継続が可能である。
海外在留邦人数調査統計(外務省)
出国税が富裕層の流出抑止にどの程度効果があったか、キャピタルゲイン課税のないニュージーランド・香港・シンガポール・スイスの海外在留邦人数の推移をとってみました。が、よくわかりません。🙄
(単位:人) | 2013年10月 | 2014年10月 | 2015年10月 | 2016年10月 |
ニュージーランド | 15,807 | 16,705 | 17,991 | 18,706 |
香港 | 24,993 | 27,146 | 27,429 | 26,642 |
シンガポール | 31,038 | 35,982 | 36,963 | 37,504 |
スイス | 10,166 | 10,166 | 10,310 | 10,614 |
導入されたのが2015年7月ですので、香港・シンガポールあたりはその1年前に大分増えて、その後の増加が抑えられているという意味では、一定の効果があったんでしょうか。
富裕層とは別に日系企業の海外進出も進んできている時期なので、単に人数ベースだとその分の増加が反映されちゃいますからね。
出国税の導入の効果は、短期的には既存の富裕層の早期脱出を即したというだけのことであり、日本の税収減の抑止効果は、今後新たに育つ富裕層の国外脱出時の税収減を防止するときにやっと発揮されるだけ。いや、違う節税策ができるだけですね😄。
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また、シンガポールへの出張に関して質問の多い事項(ビジネスの服装、習慣、ビザの要否、罰金、保険、持ち物など)もまとめておきましたので、あわせてご参考にしていただければと思います。
