【シンガポールの所得税】居住者判定で税金が変わります。役員報酬の場合は特別な規定も。

日本に住んでいるのか、シンガポールに住んでいるのか。それによって、どっちの国で税金を納めるか変わってきます。

1年中シンガポールで働いている場合にはあまり意識しないんでいいんですけど、年の途中で赴任してきました、とか、年の途中で日本に帰国しますとか。シンガポールだけでなく、東南アジア各国を回っているんですよ、とか。いろんなケースがありますよね。

そんな時に必ず出てくるのが、居住者か非居住者か、とか183日ルールとかいう言葉。一度まとめておきましょう。

シンガポールには役員さんも多く働いているので、普通とは違う役員さんの取り扱いもいっしょに解説しちゃいます。

「居住者」「非居住者」の判定が重要です

日本の所得税法では、個人を「居住者」と「非居住者」に区分し、課税範囲を定めています日本国籍の「居住者」は、所得がどの国から生じようとも、すべての所得に対して、日本で所得税が課税されます。

一方、「非居住者」は原則として生活の拠点がある外国で所得税が課され、日本で課税されるのは、日本国内において生じた所得(国内源泉所得)だけになります。

このように、日本で所得税が課される範囲は、「居住者」か「非居住者」かによって違うため、海外で勤務する時には自分が日本の「居住者」に該当するのか「非居住者」に該当するのかを、まず確認しておく必要があります。

所得税法における「居住者」「非居住者」の定義

所得税法では、「居住者」とは、国内に「住所」を有し、又は、現在まで引き続き1年以上「居所」を有する個人と定義されています。そして、「非居住者」は、居住者以外の個人と定義されています。

「居住者」の判定に用いられる「住所」とは、個人の「生活の本拠」をいい、「生活の本拠」かどうかは客観的事実、すなわち住居、職業、国内において生計を一にする配偶者その他親族を有するか否か、資産の所在等、によって判定します(所得税法基本通達2-1、最高裁昭和63年7月15日判決)。「居所」は、「その人の生活の本拠ではないが、その人が現実に居住している場所」です。

というのが、所得税法上の「居住者」と「非居住者」の話し(原則論)です。

租税条約上の「居住者」判定

租税条約では、日本と違う規定を置いている国との二重課税を防止するために、共通の居住者の判定方法を定めています。

租税条約では、「恒久的住居」、「利害関係の中心的場所」、「常用の住居」そして「国籍」の順に考えて、どちらの国の「居住者」となるかを決めます。

租税条約上の「居住者」の他の国での所得に対する所得税の納付方法

他国での勤務から得た給与所得(役員報酬は含まない)に関して、居住者が次の(ア)から(ウ)に該当する場合は、居住国だけで所得税を納めることができる。

(ア)報酬の受領者が継続するいかなる12箇月の期間においても合計183日を超えない期間当該他方の締結国内に滞在すること。

(イ)報酬が当該他方の締結国の居住者でない雇用者又はこれに代わる者から支払われるものであること。

(ウ)報酬が雇用者の当該他方の締結国内に有する恒久的施設又は固定的施設によって負担されるものでないこと

上記を総合して居住者かどうかの判定を行います

日本法人の取締役等の役員ではなく、シンガポールに183日以上滞在勤務している方は、シンガポールで所得税を納めれば問題ないでしょう。

だからといって、「183日海外にいれば日本の非居住者になるので日本で税金を払う必要がない」という意味ではありません。

海外滞在日数合計が183日以上で、日本の滞在日数が183未満であっても、海外では複数の国に滞在しており日本のコントロールが強いケースや日本に家族が住んでいるケースなど、諸事情から実質的判断により日本の居住者であると判定される場合もあり、その場合には日本で納税義務を負う場合もあるからである。

実質判定といえば実質判定ですが、それだけに個人でジャッジするのが難しい場合もありますよね。

役員報酬にかんしてはまた別の取り扱いがあるので注意が必要です。



役員報酬に関する所得税の取り扱い

役員報酬については、日本とシンガポールとの間で別途租税条約が締結されているので、これに従う必要があります。

日本「非居住者」(シンガポール居住者)である日本法人の役員が、日本の法人から役員報酬を受け取る場合

シンガポール居住者が日本法人から受け取った役員報酬は、日本の所得税の対象となります。
これはシンガポール・日本間の租税条約に基づいています。

すなわち、租税条約では、一方の締約国(この例ではシンガポール)の居住者が、他方の締約国(日本)の居住者である法人の役員の資格で取得する役員報酬その他これに類する支払金に対しては、当該他方の締約国(日本)において租税を課することができる(日星租税条約第16条)とされているため、役員報酬に関しては、役員となっている法人の居住地国(この例では日本)で課税されます。

したがって、日本「非居住者」の国内源泉所得として扱われ、支払いに際して、20.42%の所得税が源泉徴収され、残りが役員に支給されることになります。(シンガポールでは、シンガポールを源泉とする所得に対してのみ課税されるため、日本の法人の取締役への役員報酬は課税対象外になります。)

日本「居住者」(シンガポール非居住者)のシンガポールの役員が、シンガポールの法人から役員報酬を受け取る場合

上述のように、シンガポール・日本間の租税条約では、「一方の締約国(この例では日本)の居住者が、他方の締約国(シンガポール)の居住者である法人の役員の資格で取得する役員報酬その他これに類する支払金に対しては、当該他方の締約国(シンガポール)において租税を課することができる」とされている。

そのため、シンガポール法人から支払われる日本居住の役員に対する報酬は、シンガポールで課税されます。非居住の取締役への報酬支給には源泉徴収が必要であり22%の源泉税を差引き、残りが取締役に支給されることになります。

一方、日本の所得税法では、日本居住者 は『全世界所得課税』であるため、シンガポール法人から支払われる役員報酬にも、日本で所得税が課税されます。

この結果、日本とシンガポールで2重課税となってしまうため、日本での所得税の申告時に、シンガポールで源泉された22%分について外国税額控除の適用を受けることになります。

なーんかむずかしいですけど、全部理解する必要もないので、ご自身のパターンのやつだけじっくり読んでみてくださいね。

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